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甲状腺検査

福島原発事故後の甲状腺検査二次検査における受診者・家族の不安と心理的サポートに関する自由記述の量的・質的分析

福島原発事故後の甲状腺検査二次検査における受診者・家族の不安と心理的サポートに関する自由記述の量的・質的分析

要約

福島第一原発事故後、福島県では「県民健康調査」甲状腺検査が実施されています。本研究では、甲状腺検査の二次検査受診者とその家族に対する質問紙調査の自由記述欄に記載されていた「不安」と「心理的サポートへの意見」の記述に着目しました。分析は、記述の数と、どのような記述内容がみられるかという質的な分の観点から行いました。受診前後の不安、心理的サポートへの意見に少なくとも1つ以上の記載があった受診者138名(男性28名、女性109名、不明1名、平均年齢19.3歳)と、その家族206名(母親182名、父親20名、その他3名、不明1名)を対象としました。記述数の分析では、受診前不安では受診者より家族で統計的に有意に多く(p < 0.05)、受診後は受診者・家族とも有意に減少していました(順に、p < 0.001、p < 0.01)。また、KH coderのソフトを用いて質的分析を行った結果、受診者は「不安」「検査」「採血」などの検査に関する単語が、家族は「原発」「遺伝」「大学受験」などの所見の原因や今後の見通しに関する単語がみられ、複数のカテゴリに分けられました。また、受診者の年齢や性別によって家族が記述する単語の内容も異なっていました。受診者・家族間で不安の質が異なったのは、受診者は初めての検査に不安を感じる一方で、家族は原発事故に起因するトラウマ的不安がみられた可能性があり、受診者と家族双方の不安の質に留意して心理的サポートを行っていく必要があるといえます。

書誌情報

タイトル 福島原発事故後の甲状腺検査二次検査における受診者・家族の不安と心理的サポートに関する自由記述の量的・質的分析
著者

二本松直人1, 2、瀬藤乃理子1, 2、行形裕子1、濱谷由香1、鈴木悟1, 3、古屋文彦1, 4、横谷進1、前田正治1, 2、大平哲也1, 5、安村誠司1, 6、大戸斉1、神谷研二1、志村浩己1
1 福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター、2 福島県立医科大学医学部災害こころの医学講座、3 福島県立医科大学ふくしま国際医療科学センター甲状腺・内分泌センター、4 福島県立医科大学医学部甲状腺内分泌学講座、5 福島県立医科大学医学部疫学講座、6 福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座、7 福島県立医科大学医学部臨床検査医学講座

掲載誌 Journal of Breast and Thyroid Sonology. 2025 Jan; 14(1) 22-27.
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